『不幸にする親』 ダン・ニューハース (著)を読みました

不幸にする親 人生を奪われる子供 (講談社+α文庫)を読みました。

親が不健康なやり方で子供をコントロールすることで、

どのように子供が不幸になるのか?

そして、それをどうやって解決していくのか?

が書かれた本です。

虐待の中でも、主に精神的虐待について書かれた本とも言えます。

肉体的虐待であっても、精神的虐待であっても、子供にトラウマができてしまう点では同じです。

精神的虐待の方が、記憶に残らないままトラウマができてしまうので、自分でトラウマに気づけず対処できないまま悩み続ける人も多いかもしれません。また、体に傷などが残るわけではないので、外からみたら理想的な家庭のなかでも起こっている場合があります。

有害なコントロールとはどのようなものか?どういった症状がでるか?などが詳しく書かれているので、虐待された記憶はないのに、なんか人生がうまくいかないと思っている人は読んでみるといいかもしれません。

親の有害なコントロールとは?

「不健康で有害なコントロールをする親」とは、子供の成長をはぐくむためではなく、自分たちを喜ばせ、自分たちを守り、自分たちのためになるように行動する親」

と本では定義されています。

自分がコントロールする親のもとで育ったかどうかチェックするリストが65項目のっています。
3分の1以上イエスなら、コントロールばかりする親の元で育った可能性が高いそうです。

全部はかきだせませんが、一部はこんな感じです。

大人になってからのあなたは
1、人と対立するのが心配でそういう場面を心に思い描いてくよくよ考えることがよくある。
2、優柔不断で、何かを決めることがなかなかできない。
3、人との関係ではいつも他人のニーズを優先してしまい、自分を見失うことがよくある。
4、自分にあった信条や人生観を見つけることに困難を感じる。
5、リラックスしたり、笑ったり、自然にふるまうことが苦手。
6、異性との温かい肌の触れ合い、仲むつまじい関係を持つことがなかなかできない。
7、人から褒められても言葉通りに受け止めることができない
8、摂食障害(拒食症や過食症)やアディクションがある
9、ストレスが原因の健康障害があり、いつも疲れていて燃え尽きやすく、慢性的な体の痛みがある
10、仕事や人間関係で、自ら立場を悪くしてしまうことが多い
11、他の人には自分にない自信があるように感じる
12、親しい人の愛情を試すようなことをする
13、友人や配偶者、恋人などに対して、加虐的になったり、コントロールしようとしたり、非礼な言動をする
14、他人は自分を傷つけたり、利用したりするに違いないとおもう。

心が健康な親と不健康な親の違い

本では分かりやすく表になっています。

心が健康な親の家庭は、子供が一人の人権を持った人間として育つことができる家です。

一方、
心が不健康でコントロールする親の態度は、たとえば

・子供に与える愛情には条件がついている
・子供の人間性を尊重しない
・親子間にコミュニケーションがない
・子供は感情を持つことが許されない
・子供は嘲笑される
・子育てのやり方が教条主義的で厳格または一貫性がなくしょっちゅう変わる
・子供の内面の世界を否定する
・社会との結びつきがない

などだそうです。

有害な親にコントロールされた子供の心に生じる5つの歪み

コントロールばかりする親に育てらると、親の歪んだものの見方を受け継いでしまうリスクが高くなるそうです。

5つの歪み
・「権力」「能力」についての見方の歪み
・感情や感覚、願望に関する歪み
・考えの歪み
・人間関係に関する感覚の歪み
・アイデンティティーに関する感覚の歪み

だそうです。
この歪みのせいで、大人になっても様々な問題が引き起こさてしまいます。

有害なコントロールのパターン 有害な親の8つのタイプ

有害な親8つのタイプの特徴とそのような親に育てられると、どのようになるのかについて書かれています。
一人の親のなかに複合的に存在することが多いようです。

有害な親の8つのタイプ
・かまいすぎて子供を窒息される親
・子供の幸せを取り上げる親
・完璧主義者の親
・カルトのような親
・支離滅裂な親
・常に自分の都合が優先する親
・身体的な虐待をする親
・責任を果たせない親

有害な8つのタイプの親が心理的に得ようとしているものとその代償

かまいすぎて子供を窒息される親

心理的に得ようとしているもの:子供に密着することで孤独を紛らわす
その代償:情緒的な崩壊一歩手前

子供の幸せを取り上げる親

心理的に得ようとしているもの:条件付きの愛で子供の心を操る
その代償:冷たさを保つことでかろうじて生きている

完璧主義者の親

心理的に得ようとしているもの:優越性を追求することで自分の欠点を隠す
その代償:人のあら探しが止められず永遠に満たされることがない

カルトのような親

心理的に得ようとしているもの:自分が絶対正しいと宣言し疑念や不承認から逃れる
その代償:本当はそうでないとバレることを恐れる

支離滅裂な親

心理的に得ようとしているもの:豹変し人をまごつかせる
その代償:安心感のない人生から逃れられない

常に自分の都合が優先する親

心理的に得ようとしているもの:心の虚しさから逃れようとする
その代償:利己的に行動しても心の虚しさを埋めることはできない

身体的な虐待をする親

心理的に得ようとしているもの:自分で処理できない感情を子供を攻撃して一時的に解き放つ
その代償:怒りと罪の火山が静まることはない

責任を果たせない親

心理的に得ようとしているもの:自分に期待させないことで責任や欲求から逃れる
その代償:いつも縮こまって生きることになる

有害な親の洗脳のしくみ

親の過剰なコントロールは”洗脳”に似た強い力を持っていると作者はいっています。

洗脳には、真実のねじ曲げによる責任回避と、思考の矯正が含まれていて、その典型的な12の手口が書かれています。

本では、12の手口を使われることで子供に起きる可能性のある症状についても詳しく書かれています。
・子供の食事環境をコントロール
・子供の身体に関することを過剰にコントロール
・子供の個人的な領域を過剰にコントロール
・子供の友人関係を過剰にコントロール
・子供が自分で決めようとすることをコントロール
・子供の発言をコントロール
・子供の感情をコントロール
・子供の考えをコントロール
・子供をいじめ虐待する
・子供の幸せを取り上げてしまう
・子供の頭を混乱させる
・陰湿な手口を用いて子供の心を操る

親に洗脳された子供は、親の決め付けと偏見を自分のものとして内面化し、そのために心の成長が止まってしまいます。

そして洗脳から解放されるためには、「実在する親」と「心のなかに住む親」との両方と健康的な関係を作ることが大切です。

子供時代のトラウマとそれによる大人になってからの影響

親から不健康なコントロールをされて育った場合にでてくる大人になってからの影響についても詳しくかかれています。

人間関係全般、異性との親密な関係、親として、仕事に関して、情緒面、精神、身体、心、成長全般についてのことが書かれています。

一般的なトラウマ後に生じるストレス症状は以下のようなものです。

1、トラウマとなった出来事を象徴するような出来事や、それと似た出来事があると、反射的に敏感に反応する

2、体験したトラウマを思い起こさせるような考えや感覚、行動、人、場所などをさけようとする

3、無感覚、無関心、人との結びつきがない、または人生の重要なできごとに参加する興味を感じない

4、感情を感じることのできる幅が極めて狭い

5、すぐ苛立つ、または、常に警戒してピリピリしている、または、睡眠障害がある、または一つのことに集中できない

6、過去に体験したトラウマのことをしょっちゅう考えていたり、そのイメージが頭に浮かぶなどして、振り払おうとしてもなかなか振り払えなかったり、その夢を見たりフラッシュバックが起きたりして、過去のトラウマを心のなかで再体験する

コントロールしたがる親の二つの共通点

コントロールする親の多くには二つの共通点があるそうです。

1、子供時代に、複数の深刻なトラウマを体験していることが多い
2、そのために引き起こされた結果に対してほとんど助けを得ることができなかった。

トラウマを体験し、しかも助けを得られない被害者は、自分が身を置いている世界への信頼感を失います。大切な人が急にいなくなってしまったり、信頼していた人に傷つけられたり、裏切られたり、予告もなく不幸に見舞われるような世界は、信頼したくてもできません。
人や世の中が信頼できず、そのうえまだ何か失うかもしれないという不安が常にある子供は、感情的な成長が止まってしまうことがあります。すると、大人になっても子供の感情と行動から抜け出すことができず、他人をコントロールしなくてはいられない人生哲学を発達されることになります。

また、不健康で過剰なコントロールは何世代も前からつづいてきたものであることが多いようです。

このような、コントロールの連鎖、トラウマの連鎖は気づいた人が、次の世代に対して同じ過ちを繰り返さないようにしなければ、なくなりません。

不健康なコントロールをされて育ったことによる問題を解決する

パート3では
不健康な心の結びつきを断ち切る方法
親との関係の持ち方を変える方法
人生をリセットする方法
について書かれています。

親と対決すべきか、許しに関する誤解、親の老いと死や兄弟姉妹との関係など例とともに詳しく解説されています。

トラウマをうけた過去に意味を見出す

自分の過去に意味を見出すためには、
”過去に負った心の痛みを、自分の強さとともに認識する”ことが大事です。

不健康な親のコントロールの「被害者」であると同時に「生き延びた人間」として自分をみることが大切です。

自分を「罪のない、傷つけられた子供」だったのと同時に「勇気も資質もある強い人間」とみてください。

一度身についた考えや古い習慣を消し去って、新しい自分に成長するには時間がかかることも忘れないでください。

あなたは、世代から世代へと続いてきた問題を両肩に負わされてしまいましたが、それはあなたの代で確実に止めてください。あなたにはできるはずです。なぜなら、あなたは子供の時、すべてをコントロールしたがる親のもとで”洗脳”され、真実を知らされず、助けてくれる仲間もほとんどいなかったにもかかわらず、生き延びてきたのです。このことをはっきり認識すれば、これからの人生で正面から受けとめられないことなど、ほとんどないに違いないのですから。

まとめ

不健康で過剰なコントロールを受けてきた人にとっては、読んでいると苦しくなることもあるかもしれません。

しかし、理解することが、親からの洗脳を解く、最初の一歩になります。

チェックリストや表があって、すごくわかりやすいので、子供の頃のトラウマの全体像を理解するのに役立つ本です。


不幸にする親 人生を奪われる子供 (講談社+α文庫)

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